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企業規模別労務監査的アプローチ 第15回 監査部が設置されていない企業へのアプローチ方法(監査部設置助言) その3

今回は抜き打ちで実施する「早朝監査」の実際について説明していきます。印紙切手の現物と台帳の照合、社員に貸与しているパソコンや携帯電話機の照合について紹介します。

文末に【図表5 印紙管理簿(例)】をお示ししました。その当日の台帳の最終行の員数、この表の例では残高数量欄の109という数字の前に監査印を押します。監査に入った日付が仮に4月17日でも、4月11日の数字の頭部に押印でかまいません。4月11日から17日早朝まで(16日の最終退出時刻まで)その印紙を使用していないことを確認する印影となります。なお、4月17日に監査があったことの記録は監査部から被監査部署に発出する監査実施通知書によります。

もし、現物と台帳の突合をする「早朝監査」が予告なら、例えば4月14日に「責任者」が不正に換金していたとしても17日以前に戻すことができてしまいます。お示しした印紙管理簿の例では4月11日の購入日の「受入」欄の印も「残高」欄の印も同じ「責任者」が押印していますが、担当者に買わせて責任者が確認するという手続きが望ましいです。要は単独で管理させないということです。

印紙切手や金券類の監査の際は、保管管理の担当者の目の前で数量を点検します。担当者にはプレッシャーかもしれませんが、監査部員が無くしたなどと言われるのを防ぐためにも担当者立会いは必須です。

現物数量と台帳記載の数量が不一致の場合、特に台帳上の数量よりも現物の数量が少ない場合は徹底的な原因究明が必要となります。もっとも印紙同士がピタッとくっついているような場合もあります。現物を出す担当者も数える監査人も落ち着いて実施しましょう。

社員に貸与しているパソコンは、各担当者の机上にありますので台帳を元にパソコンのシリアルナンバーと突合していきます。予備機や廃棄待ちのパソコンも台帳に記載されているか、廃棄済みなのに台帳に登載されたままになっていないか、台帳では引き落とされているのに現物がまだオフィス内に残っていないか、などを調べます。

パソコンのCドライブやゴミ箱フォルダにファイルが残っていないか、残置されたファイルにパスワードがかかっておらず、かつ、顧客情報が書かれていることはないか?などをチェックします。

業務用携帯電話機を貸与している場合の現物と台帳の突合は、直行直帰の人など、必ずしも監査当日の朝にいるとは限らないので全台突合は困難かもしれませんが、所持している事実はその携帯電話に架電することで確認できます。

監査部員が携帯電話機の提出を受けて確認するときは、画面ロックがかかっているか、充電により十分な電池残量があるかなど、その業務用携帯電話を貸与するにあたってのルールに基づきチェックしていきます。

台帳では「処分済み」となっていながら、その携帯電話機を携帯キャリアに宅配便で送付することをもらしてしまうと携帯電話使用料が請求されます。電話機を台帳から引き落とすときは送付記録を添付する必要があります。

企業規模がある程度大きくなって監査部の設置を考えているようなシチュエーションを想定しての記述は今回で終わります。次回は「中小企業へのアプローチ方法(内部で牽制を効かせるために) その1」です。