企業規模別労務監査的アプローチ 第17回 中小企業へのアプローチ方法(内部で牽制を効かせるために) その2
前回は、内部で牽制を効かせるための方策として、
- 監査部設置を目指して体制を整える
- 監査部は当面設置しないけれど、監査的な仕組みをつくって実践していく
の2つがあり、①について、仕事を進めていくうえでの社内ルールを法改正や事業環境の変化を踏まえて見直していくことが大切であることを解説しました。
今回と次回、上記②の具体的なやり方「自己点検」について説明していきます。
自己点検とは、各部門や業務担当者が自らの業務プロセスやリスク管理状況を定期的にチェック・評価する仕組みのことです。内部監査部門による監査とは別に、現場レベルで継続的に行われる予防的な取り組みといえます。
前回、中小企業の場合、社長が営業の先頭に立ち、社長夫人がガッチリ財布を握るという役割分担が多い、とコメントしました。自己点検という手法があるんですよ、と紹介したら、
「わたし(社長夫人)が管理しているんだから、間違いないの。監査?自己点検? わたしを信じないってこと?」あるいは「経理の○○さんには、入社時に手取足取り教えて、もう10年以上帳簿を任せていて一度も問題を起こしたことありません。監査?自己点検? ちゃんちゃらおかしいわ、怒るわよ」と息巻かれるかもしれません。
しかし、不正は起きるときは起こります。このブログの第5回で紹介した、平成22年に発覚した長野県建設業厚生年金基金の総額23億円とも言われている巨額横領事件の犯人の最初の(全部で43回)横領は切手の換金だと報じられていました。
文末に【図表5の2 印紙管理簿(例の2)】をお示ししました。
この例では6月19日に、この印紙を管理している部署に所属している飯島氏が自己点検の点検者の任命を受けて200円印紙の現物が96枚で帳簿の残高と一致していることを業務印の押印で記録に残したものです。右欄外に日付印と「自己点検」の旨の書き込みを行って実施日付を明らかにします。
員数の一致の確認のほか(不一致の場合は要原因究明)、受け渡し記録が正しくなされているか、などの事務面も点検します。もし、下に示した【図表5の2】で6月18日の96枚という残高の右の欄に「責任者」の業務印がなければ、担当者が責任者の承諾なしに印紙を1枚使用したことになり、ルール違反が発見されたことになります。
自己点検には、次回に説明する勤怠管理に関するものなど、いろいろな点検項目がありますが、印紙切手のような現物点検の場合は、必ず朝一番に実施します。点検者は普段、印紙切手の管理に携わっていない者から任命します。
なお、前回からは「監査部設置なんて、10年先にも想像していない」中小企業を念頭にしていますので、文末の【図表5の2】に監査印のある表をお示しするのは矛盾していることになります。ただ、次回説明しますが、監査部のある企業では監査項目の中に自己点検の実施状況をチェックすることがありますので、あえて残しました。
今日の記事は以上です。次回は「中小企業へのアプローチ方法(内部で牽制を効かせるために) その3」です。
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